2012年10月13日土曜日

ディ・フランチェスコ 『デ・ロッシのスタメン落ちはゼーマンの作戦だ。』 / De Franchesco talks about Roma's controversy.


元ローマのMFエウゼビオ・ディ・フランチェスコはデ・ロッシのスタメン
落ちはデ・ロッシを奮起させるためのゼーマンの作戦だったと語る。


















2012年10月12日金曜日

マイケル・ブラッドリー代理人インタビュー / Bradley flattered by Valencia interest



代理人によると、バレンシアが今シーズンよりローマに加入したマイケル
ブラッドリーの獲得に興味を示しているとのことだ。

25歳のアメリカ代表選手はそのことを素直に喜びながらも、移籍に
ついては全く考えていないとブラッドリーの代理人は続けた。

『ブラッドリーに関心を示してくれるクラブが有ると言うのはいつだって
良い事だよ。ただ今は移籍の話をするタイミングでは無いね。私の
願望も入っているけど、ブラッドリーはローマの中心選手になりつつ
あるんだからね。』

『(今日のアタランタ戦でのゴールは)今までのブラッドリーの最高の
プレーの1つだ。長い怪我からの復帰戦、しかも連敗でチーム状態が
非常に難しい状態にある中で、移籍後初ゴールを決めたんだからね。』

『彼は試合の終わったあと家に来て2人で祝杯をあげたよ。しかし彼は
もっとチームに貢献出来るはずだ。私は彼がチームでレギュラーの座を
獲得出来ると確信している。』

『私は昨日ゼーマンが、ブラッドリーの練習に取り組む姿勢を褒めている
のを聞いた。選手とゼーマンの関係は上手く行っているし、マイケルは
彼のサッカー哲学を信じている。』

2012年10月11日木曜日

ローマ新スタジアム計画の詳細を発表 / Roma announces new stadium plans

ローマ会長のジェームズ・パロッタは新スタジアム建設計画が大詰めの
段階にあることを明らかにしている。

現在ローマはラツィオと共にローマ市の所有するスタディオ・オリンピコを
ホームスタジアムとして間借りしている状態であるが、クラブの売上高を
伸ばす為にも自らのスタジアムを持つ事が急務となっている。
ローマとアメリカ人オーナーは自前のスタジアムを建設して成功を収めた
ユベントスに追いつくことを目指しているのだ。


 『私としては新スタジアムはコロッセオを使いたかったんだがね、使用中
だからダメだって言われたよ。』 笑いながらパロッタは新スタジアム
構想について話し始めた。

『冗談はさておき、もうほとんど建設予定地は絞り込んでいるんだ。ローマ
市長と市議会とは既に何十回も協議を重ねている。』

『我々は100か所の候補地の中から新スタジアム候補地を12か所に
まで絞り、それから今回の計画のコンサルタントを務める
”Cushman & Wakefield社”の助言でその中から最終候補の3か所を
選んだ。現在はそこから正式な着工予定地を選んでいるところだよ。』
(*ローマ南東のTor di Valle地区が最有力と報道されている)


『スタジアムの収容人員は6万人、各種ショップとレストランを併設する。
設計は世界的に有名な建築家ダン・ミース氏に依頼した。2016年の
チャンピオンズリーグには竣工を間に合わせるつもりだよ。』'

『どんなものを作るかによるんだが、スタジアム建設にかかる費用は
2億ユーロを越えるだろう。』

巨額の投資は株主や投資家にとっては大きな負担になる。加えて
11/12シーズンの決算でも大幅な赤字を計上しているにも関わらず
パロッタは楽観的である。

『11/12シーズンの決算は悪くなかった。確かに多額の損失は計上したが
それは我々の予想の範囲内、いや予想よりも良かったくらいだ。』

『今年は売上高を伸ばすことと支出の節約を同時にやるつもりだよ。
チケットの売り上げは伸びているし、ディズニーやフォルクスワーゲン
と言った国際的企業と新たに契約を結んだおかげでスポンサー収入
も伸びている。』

『今すぐにということは無いだろうが、将来的に上場廃止という選択肢は
 十分に有り得るよ(ローマの株価は昨日も乱高下を繰り返した)。
株価というものは投機的な影響を受けるもので、実態のクラブの価値を
表しているものではない。 』

パロッタ氏が9年前、NBLボストン・セルティックスを買収した時は
買収と時を同じくして上場を廃止している。

2012年10月10日水曜日

マルコ・カッセッティ インタビュー/Casseti : Football life in England.



元ローマのサイドバックで現在イングランド2部のワトフォードに所属する
マルコ・カッセッティのインタビュー。

-英国での選手生活は如何ですか?
英2部チャンピオンシップは各チームの力が拮抗しているリーグだよ。
どのチームにも優勝するチャンスが有る。ワトフォードはまずまずの
スタートを切った。ここ最近の3試合で2勝1敗は悪くないね。

-ローマから契約延長のオファーは有りませんでしたが?
理由は僕の年齢だよ。新体制になったローマは若返りを図る方針
だった。だからローマに残れなかったのは残念だけど、特に驚くような
ことでもなかったね。

-今シーズンのローマのつまずきを予想していましたか?
カターニア戦、インテル戦、あと数試合はTVで観たよ。全ての試合を
見てる訳じゃないけどローマの事はインターネットを通じていつもチェック
してる。チームがフィジカル的に仕上がっていなかったことには
予想していなかったよ。いつものゼーマンのチームは最初からチームの
状態をピークに持ってくるからね。おかげで3月過ぎに失速するんだけど。
どうあれゼーマンは彼の練習のやり方を変えるつもりはないだろうね。

-あなたのレッチェ時代はどうでしたか?
1月までは6位だった。

-ゼーマンとデ・ロッシ、オスヴァルドの対立の件は聞いていますか?
僕はもうローマのロッカールームに居るわけじゃないからコメントは
出来ないよ。ただ1つ言えるのは僕がレッチェでゼーマンの下でプレー
していた時も、チーム内にはハードな練習に不満の声もあったけど、
結局は結果がすべてを解決してくれたってことだね。

-ゼーマンがこの2人を外したことに驚きましたか?
ゼーマンは2人の価値を十分に判っている。これは言うならばゼーマン
流の励ましだよ。ゼーマンは単純に選手を非難するのではなく
こんなやり方を取るんだ。僕の場合もそうだった。
ただローマはレッチェと違って、何かチーム内で事件が起こると
すぐにマスコミに有ること無い事色々と書きたてられるからね。

-スタメンを外された3人はどうすれば良いと思います?
スタメンに戻れるように今まで以上に熱心に練習に打ち込むだけだよ。
実は僕もレッチェで最初の内は全く試合で使ってもらえなかったんだ。
ある日ゼーマンは僕を呼んで”もっとお前は出来るはずだ”って励まして
くれたんだ。彼は絶対に同じことをこの3人にも伝えてると思うよ。

-イングランドでの生活はどうですか?
僕はもう終わった選手だと言われていた。それを間違いだったと証明
するためにイングランドでプレーを続けることを選んだんだ。
僕は昨シーズンのはじめに怪我を抱えていたのは事実だ。今は全く
問題ない。昨シーズンの後半に怪我から回復しても試合に出れなかった
のはエンリケの戦術的な理由だよ。それは監督の権限だし、僕はそれを
受け入れただけさ。

ロゼッラ・センシ『トッティはまだプレー出来る』 / Rosella Sensi "Totti should play on"



ローマの元会長ロゼッラ・センシはアタランタ戦でも活躍を見せたトッティを
賞賛している。
ローマの精神的リーダーでもあるトッティについては今シーズン終了後に
引退するのではないかとの噂も有るが、センシ元会長はばかげていると
一蹴している。

『こんなにレベルの高いプレーを見せているのに何故彼が引退しなきゃ
いけないの?』

センシ女史は続けてクラブの現経営陣とローマのサポーター達に
ついてもコメントしている。

『チームを動揺させたい人達など居ません。ただ結果が出ない時は
全てがますます上手く行かなくなるものです。』

『皆さんも知っているようにローマという街は特別な所です。サポーター
達はチームの成績が良い時は熱烈な声援を送りますが、逆の場合の
罵声は特別激しいものが有ります。』

『チーム内に問題が有るかどうかは外部から判断は出来ません。ただ
私が会長だった時代にはこの様な問題は頻繁に起きていましたよ。』

『私はこれからも1人のサポーターとしてチームを応援し続けますよ。
 実際に経営にタッチしていた時を懐かしく思いますけどね。』






2012年10月9日火曜日

ゼーマン『アタランタ戦後インタビュー』 / Zeman: "We needed a win today"


 ローマのゼーマン監督は何故アタランタ戦のスターティングメンバー
からデ・ロッシ、オスヴァルドそしてブルディッソという3人のスターを
外したのかを説明している。

-前半押し込まれた試合内容について

『キミたちも私が試合内容をどう思ってるかは知っているだろう。
ただ我々は苦しむことによってそこから学習し、次の機会に良い
プレーを行うことが出来るんだ。』

『試合開始直後に何度も危険なシーンがあったことは認めよう。しかし
チーム及び関係者全員にとって何よりも試合に勝ったという事実が
大事なんだよ。』

『ユベントス戦の大敗の影響で試合前のロッカールームには明らかに
緊迫した空気が有った。その緊張が試合直後にラインを間延びさせ、
相手に多くのスペースを与えてしまった原因の1つだ。DFラインを押し
上げなくてはMFに多くの負担をかけることになってしまう。しかし試合
開始直後はラインを押し上げるべきところで、緊張からずるずると
ラインを下げてしまっていたんだ。』



-3人の選手がスタメンから外れたことについて

『私がいつも言っているように私のチームでは誰にでもプレーする
チャンスが有る。しかしその日のピッチに送り出す11人を選ばなく
てはならないんだよ。私はその週のベストな11人を選ぶようにしている。』

『今日スタメンを外れた3人、デ・ロッシ、オスヴァルド、ブルディッソと
いった選手達のクオリティに全く疑いは持っていないよ。彼等は全員
チームにとって重要な選手だし、我々に必要な選手だ。』

『ブルディッソについては彼とは既に話し合ったよ。正直に話すと、私は
彼の様な熱いハートを持ち、練習熱心な選手ならチームに20人居ても
困らないと思ってるぐらいだ。ただ現時点で彼は(戦術面での理解と
いう点で)ベストな状態では無いということだ。』

『デ・ロッシのベストポジション?彼は右でも左でも問題なくプレー
することが出来る。』

『オスヴァルドについては万能ストライカーだ、3トップの中央以外の
ポジションでも問題無い。多分、攻撃面ではチームでトッティの次に
才能有る選手だろうね。ただ問題はまだその才能を十分に引き出す
ことが出来ていない点だ。』

『私がこの3人をスタメンから外したとことをキミ達は理解できない
かも知れない。ただ前の試合から今日までに起こったことを総合的に
判断して私はこの決断を下した。キミ達はその間に起こった事を
知らないのだから理解できないのは当然だ。』

-この試合でセリエAデビューを果たしたマルキーニョスについて

『この94年生まれの少年はいいモノを持っているよ。もちろんもう少し
経験を積むことは必要だろうけど、この2ヶ月彼は本当に練習に
打ち込んでいる。彼はもうフィジカル面でも技術面でもセリエAで戦える
レベルにある。シーズンを通じて彼の成長を見守っていきたいね。』

-戦術が選手に十分に理解されていないのでは?

『選手が私の考えをしっかり理解出来てない?私は彼等にサッカーの
仕方を教えるつもりは無い。要は姿勢の問題なんだよ。彼等はもっと
積極的にならなくてはならない。我々のプレーはまだ受け身すぎるし、
チームに連動性というものが無い。これが我々が今、解決すべき
最大の問題だよ。ちょうど今、チームには15人の各国代表選手が居る。
(代表ウィークでは)刺激を受けて、それぞれの選手が成長して帰って
来て欲しいね。』

2012年10月8日月曜日

パロッタ:『ローマは5年以内にスクデットを獲る』 / Pallotta: 'Roma title in five years'



ローマのオーナーであるジェームズ・パロッタは明日に控えたクラブの
”ホール・オブ・フェイム”(栄誉の殿堂)のオープンを控えて5年以内に
スクデットを獲ると目標を明らかにしている。

アメリカ人オーナーは今週ローマ入りした後、経営陣、ゼーマン監督と
話し合いを行っている。ランチタイムに開催されるアタランタ戦はスタンド
から観戦する予定だ。試合前に行われる”ホール・オブ・フェイム”の
開幕式典にはメインゲストとして参加する。

『素晴らしい1日になるはずだよ。全てのファンが名誉の殿堂の開幕を
楽しむ事が出来るはずだ。』

『私が9年前にNBAのボストン・セルティックスを買収した時、私は自分
自身に5年以内にタイトルを獲得すると誓ったんだ。そしてそれを実際に
達成した。』

『私はローマでも同じことをやり遂げるつもりだ。ローマが本来あるべき
場所(=スクデットを争える)に彼等を連れ戻すよ。』

 『幸いにもローマには良いスタッフが揃っている。私はこの先20年以上を
かけてこの偉大なフットボールクラブを再建するつもりだよ。』

2012年10月6日土曜日

フロレンツィ契約延長 / Alessandro Florenzi extended his contract with Roma till 2016


正直に言うと今季のローマは完全に期待外れである。ミランやインテル
を凌ぐ資金をメルカートにつぎ込みながらここまで5試合で1勝のみと
いう成績は到底受け入れられるものではない。

そんな中で数少ない明るいニュースがセリエBクロトーネでの修行から
帰って来た21歳のアレッサンドロ・フロレンツィのブレイクである。
この173cmの小柄なMFはローマに呼び戻された当初は中盤の控えと
いう役割でしか見られていなかったが、プレシーズンでその才能の
片鱗を見せ付けると、デ・ロッシ、ブラッドリー、ピアニッチと言った各国
A代表クラスが並ぶローマの中盤でレギュラーの座を掴んでしまった。
ここまで5試合すべてに出場し、2ゴール、1アシストという成績は実質的
にセリエA初挑戦の選手としては文句のつけようが無い。

この活躍を受けてローマは早速フロレンツィとの契約を延長している。
新たな契約期間は2016年6月まで、年俸はセリエAの最低保障年俸で
ある2万6千ユーロから60万ユーロ+ボーナスにまで跳ね上がった。
(ボーナスはチームの総得点、個人の出場試合・得点数、代表召集
等による変動制インセンティブで最大10万ユーロ/年と言われている)

このニュースがローマの公式ホームページで発表された後、彼の公式
ツィッターには数百の祝福のメッセージがファンから寄せられた。ローマの
プリマヴェーラ出身である彼には地元ファンからの期待も高い。早くも
トッティ、デ・ロッシの後継者との声も上がっている。

そしてフロレンツィの活躍と契約延長をもっとも喜んでいるのは、1年前の
彼と同じようにセリエAのプロビンチャクラブやセリエBにレンタル移籍に
出されているローマの若手選手である。 フロレンツィの様にレンタル先で
結果を出せば、ローマに呼び戻され、出場機会が与えられ、契約の
見直し、U21代表への召集の道も開ける事を彼が証明したからだ。
ヴィヴィアーニ、カプラーリ、ヴェッレ、クレシェンツィ、ベルトラッチといった
選手達は1年後にローマに呼び戻してもらえるようにレンタル先での
プレーにも熱が入るだろう。


最後にイタリアU-20代表コーチのフランチェスコ・ロッカのフロレンツィに
ついてのコメントを引用しておこう。

『 プランデッリが将来フロレンツィを代表に召集するつもりがあるかどうかは
判らない。ただ正直そうなって欲しいと私は願ってるよ、彼は私の誇り
だからね。彼がローマのプリマヴェーラでキャプテンを務めていた時、
私が初めて彼をU-20代表に召集したんだ。当時は多くの批判を受けたよ、
今ではみんなそれが良い判断だったって口を揃えるんだけどね(笑)』

今回フロレンツィがローマと結んだ新契約には”ブラジルワールドカップの
代表メンバーに選ばれたら追加ボーナス”との条項が入っていると言われて
いる。彼が2年後にボーナスを受け取れるように願おう。

2012年10月2日火曜日

サバティーニ ユベントス戦後インタビュー/ Sabatini :Many players don't deserve to wear the shirts



ローマのスポーツ・ディレクター、ワルテル・サバティーニはユベントスに
惨敗したチームを糾弾している。大半の選手はローマのユニフォームを
着るに相応しくなかったと明言してる。

ローマは土曜日の夜セリエA王者のユベントスに完敗した。サバティーニは
選手達の姿勢を激しく非難し、この敗北から多くを学ぶように要求している。

『多くの選手達はこのシャツを着る資格が無かった。我々はすぐに軌道修正
しなければならない、直ちにだ。』

『我々はほんの数分の間に2回もアッパーカットを喰らった。次の瞬間に
チームはもう気を失っていたんだ。私は選手達にこれを機に奮起して
欲しいと思っている。あまり気を落とさないようにしたいね。』 

『このチームは強いし、どんな相手とも勝負できる力が有る。ただ我々は
今日の敗北から学んで、流れを変えなくてはならない。』

期待以下の成績しか残せていないにも関わらず、サバティーニは監督の

ズデネク・ゼーマンについては擁護している。戦術面での批判については
チームはまだ発展途上段階だとしている。

『ローマはまだ完成への道のりの途中だと言っておこう。ゼーマンの
コンセプトを学んでいる段階だ。我々はまだチームとしての体をなして 
いない。ただ試合に臨む時に今日の様な試合の気持ちではダメだ。』 

『我々が大きな後れを取っている事は明らかだ。ローマは戦う姿勢と
ハートを持ってピッチに踏み出さなくてはならない。我々は今夜のひどい
痛みからまた立ち上がって、この解決方法を探しださなくてはならない。』

2012年9月30日日曜日

デ・ロッシ”スクデットのことは忘れよう” / Roma should focus to qualifying Champions League.

ダニエレ・デ・ロッシは土曜の夜のユベントス戦に1-4で敗北したあと、
チームメイトにスクデットのことは忘れようと話した。

ゼーマンに率いられたローマは前半の立て続けの3得点(ピルロ、
ヴィダル、マトリ)と後半のジョビンコの一撃により完全に打ちのめ
された。試合後、デ・ロッシはユベントスの強さを認め、スクデットの
事は忘れてチャンピオンズリーグ出場権確保を目指すべきだと
語った。


『ひどい夜だった。我々より強い相手に対して、情けない試合をして
しまった。』

『皮肉なもんだよ。僕等はユベントスより劣っていると言うことに気づく
代わりに、上手くやろうとばかり夢見ていた。事実はこうだ。ローマは
現状ではユベントスと戦えるレベルにない。よってスクデットを目指すと
言うのは間違いだ。』

『我々はヨーロッパの舞台に返り咲く為にも素晴らしいシーズンを
過ごさなくてはならない。もちろんユベントスの様なライバル達と
競争しなければならないけど、もっとも大事なのは勝ち点を積み
上げる事だ。』

『明らかに我々はフィジカルの面で何かが欠けている。走るということ1つに
関してもユベントスはより組織的に走っている。つまりローマよりも効率的に
走っているということだ。フィジカル面でも戦術面でもやるべきことは
たくさんある。そして練習を通じてお互いをもっと理解する必要も有る。』

『ユベントスは強いよ、我々がたまにしか見せれない強さを彼等は
コンスタントに示す事が出来る。』

『僕が(マンチェスターシティからのオファーを断って)残留したことを後悔
してるかって?まったく後悔してないよ。確かに今晩の様な試合の後には
ひどく傷つくけど、僕はここでとっても幸せだ。』

2012年9月28日金曜日

トッティ36歳の誕生日に向けて/happy birthday Francesco!

1日遅れだけどローマ公式HPに掲載されたトッティの誕生日に
ついての短文を日本語に訳して、ここで紹介したい。
素敵な文章だ。そしてとっても大事なことを僕等ローマファンに
思い出させてくれる。

ローマには他のビッグクラブに較べると、大富豪のオーナーも、
ビッグイヤーを掲げた経験も、歴史も知名度も無いかも知れない。
だけど僕等にはトッティが居るってことをね。



彼が1993年3月28日にセリエAデビューを果たしてから19年もの月日が
経った。この19年という時間は、そのすべてをローマだけに捧げてきた
フランチェスコ・トッティの偉大な物語でもある。

今日は我々の偉大なキャプテンの36歳の誕生日をお祝いしよう。
彼はクラブの歴史で最高の選手だ、これは誰かの個人的な意見では
ない、彼の残してきた数字と記録がそれを証明している。
公式戦出場645試合と271ゴールはもちろんクラブ史上1位。セリエAに
限ると505試合で216ゴール、これは1つのクラブで記録した数字としては
セリエAの歴史の中で最多である。216ゴールはセリエA歴代3位、
現役選手としてはトップである。

彼はローマでスクデット1回(00/01シーズン)、コッパイタリア2回
(07、08年)、スーペルコッパ1回(07年)を勝ち取り、96年のU-21欧州
選手権と06年のワールドカップでは優勝メンバーにもなった。
ユーロ2000決勝戦でのマン・オブ・ザ・マッチ獲得、 07年のゴールデン
ブーツ(欧州得点王:この年、26ゴールをあげてセリエA得点王)、
2010年のゴールデンフット、そしてAIC(イタリアサッカー選手協会)からも
合計11回のトロフィーを贈られている。


長年に渡って偉大なプレイヤーや監督からトッティに贈られた賛辞の
をいくつか紹介しよう。


『彼は世界最高の選手だよ、彼がちょっとアンラッキーな事を差し
 引いてもね。』 ~ ペレ

『彼こそが世界最高の選手だよ、ジダンやベッカムよりもね。
 彼は難しい事を簡単にやってのけるし、チーム全体をいい方向に
 持って行けるんだ。』 ~ ディエゴ・マラドーナ

『彼はここ20年でベストな選手だよ。』 ~ マルチェロ・リッピ

『彼こそがワールドクラスだ。私はこれを15年間言い続けてる
んだがね。』 ~ ズデネク・ゼーマン

『彼の横でプレーしてた時が、俺のキャリアの頂点だ。』
~ アントニオ・カッサーノ

『彼はすべてを可能にする男なんだ。』
~ ロベルト・マンシーニ

『彼は新しいリベラだよ。彼のシュートは私にリーバを思い出させる。』
~ ファビオ・カペッロ

『彼がボールを触ったら、(ショーの始まりの)鐘が鳴るんだ。』
~ ルチアーノ・スパレッティ

『フットボール・アーティスト』 ~ ミッシェル・プラティニ

『彼がレアル・マドリードのユニフォームを着てプレーするのを
 観るのが私の夢だった。』  ~ フロレンティーノ・ペレス

『トッティの様にプレーすることを心がけてる。』
~ ルカ・モドリッチ

『彼はサッカー選手のお手本だよ。』 ~ カール・ハインツ・ルンメニゲ

『フランチェスコは伝説だよ。』 ~ ウェズリー・スナイデル

『最高の”10番”の1人だ。』 ~ ロベルト・バッジョ

『私が知っている選手の中で最高の内の1人だ。』
~ アリーゴ・サッキ

『イタリアサッカー界のベストプレーヤーだ。』
~ ジョゼ・モウリーニョ

『ローマが何をするにしてもトッティがその建築家なんだ。』
~ アレックス・ファーガソン

『飛び抜けた才能の持ち主だよ。』
~ アーセン・ヴェンゲル

『ローマのコロッセオそのものだ。』
~ ローラン・ブラン

『彼と一緒に試合を出来たのは光栄だよ。』
~ ラウール・ゴンザレス

『子供の頃、トッティみたいにプレーするのが夢だった。』
~ ハビエル・パストーレ

最後にリオネル・メッシの言葉で締めくくろう。
『世界最高の選手だよ、この前イビザのバーで偶然会った時に
 一緒に写真を撮ってくれって彼に頼んだんだ。』


お誕生日おめでとう、フランチェスコ!

2012年9月27日木曜日

アウダイールが語る『ローマの成功への鍵』 / Aldair talks about defender's role in Zemanlandia.


昨シーズン、ルイス・エンリケがローマの監督となった際に我々が
もっとも耳にした単語は”我慢”と”プロジェクト”だった。

一般的な予想に反して、シーズン初めの段階ではローマのファンと
メディアはチームの改革の行く末を”我慢”強く、静かに見守っていたが、
チャンピオンズ・リーグ及びヨーロッパ・リーグへの出場が難しくなって
くると、その静けさはあっという間に消し飛んでしまった。

エンリケは非難の声にうんざりして職を辞し、代わってゼーマンが
ローマの新監督というオファーに飛びついた。
これはほんの数か月前の出来事である。しかし我々はまだ10月にも
なっていないと言うのに、開幕戦のカターニア戦でのドロー、ボローニャ
に喫した逆転負けを観た後で、既に去年と同じような苛立ちを感じ
始めている。
ローマはボローニャには2点リードをひっくり返され、カターニア相手
には何度もあったチャンスをふいにし続けた。


エンリケが辞任し、新監督にゼーマンの名前が挙がってから、今に
至るまでずっと繰り返されている質問がある。

-果たしてゼーマンはローマの新監督としてふさわしいのか?

バルディーニはこの質問に対して以前にこう答えている。
『我々が探していたのはチームを勝利に導ける監督だ。ファンを
ハッピーにさせる監督ではない。そしてゼーマンこそが前者にあて
はまると私は信じている。』 

少なくともローマがシーズン当初に躓くのは別に驚くようなこと
では無い。エンリケの元で1年をかけて理解を深めてきた戦術が
まったくの白紙になったことに加え、多くのベテラン選手がこの夏
クラブを去っている。
新加入選手のほとんどはセリエAに慣れるまでの時間が必要だし、
それに加えて新エースの期待がかかるデストロは自身に付けられた
巨額の移籍金に対する世間からのプレッシャーも跳ね除けなければ
ならない。
そして若いローマの選手達にとって、カルチョの世界に適応する
よりも難しいのはゼーマンの戦術を理解することである。彼らが
今まで経験してきたサッカーとは全く異次元の戦術を数か月で
理解するのはほぼ不可能に近い。特にディフェンダーにとっては
困難を極める作業だろう。


ローマで長らくセンターバックとして活躍し、90年代後半にゼーマンの
元でもレギュラーを務めたアウダイールはゼーマニズムにおける
ディフェンダーの役割についてこう語る。

『ゼーマンのサッカーではディフェンダーがミスをしている様に
見えるケースが非常に多いんだ。なぜならDFは膨大な運動量を
要求されるだけでなく、瞬時の状況判断を要求される様なリスクの
高いディフェンス・スタイルを求められるからね。』

アウダイールは今年ローマに加わったカスタンとピリスを注意深く
観察し続けており、彼等のセリエAでのスタートが上手くいかなかった
理由は戦術面にあると分析している。

『私は個人を非難するようなことはしないよ、特にピリスとカスタンに
ついてはね。どんな選手でも海外からイタリアにやってきてからの
最初の数か月は本当に難しいんだ。特に彼等はディフェンスラインが
とても低いブラジルから、イタリアでも一番高いローマにやってきた
んだから戸惑うのは当然さ。』

『昨年、ゼーマンが率いてセリエB優勝を成し遂げたペスカーラでさえ、
シーズン開始後9月末まではスロースタートだった。一旦新しい戦術
および新しい環境への適応が上手くいけば、私はゼーマンとローマに
もっと注文をつけることにするよ。だけど今の段階では、チームに対する
過大な期待に対して、あまりにも戦術面、チームの構成面で新しい
要素が多すぎる。』

『インテル戦では新しいローマのポテンシャルの一面を見ることが出来た。
反面、悪い面も別の試合で見えたのも事実だ。もちろんボローニャ戦の
後半の守備の崩壊を言い訳することなど出来ない。しかしその1試合
だけを持ち出してゼーマンのチームの守備を非難することは的外れだ。
ローマは今迄も同じような試合を何度も経験している。』

『安易に新加入の選手のプレーを批判して、彼等を去年アンヘルが
辿ったコースに追いやるのではなく、ピッチで起こった事の責任はもっと
経験豊富な選手・・・つまりステケレンブルフ、ブルディッソ、デ・ロッシと
いった選手達が負うべきだ。組織的なディフェンス、中盤でのボール
支配といった目的を達成するためのリーダーは彼等だからね。試合を
通じて、彼等には着実にプレーに磨きをかけていくことを期待したい。』

『これからの数か月、チームとファンに求められるのはただ1つ
"我慢"だ。これが無ければローマはまた昨シーズンの二の舞になって
しまうだろう。』

2012年9月26日水曜日

ローマに与えられた3ポイントは正しかったのか?/Roma handed 3points for Cagliari postponement

近年、カリアリに関してイタリアサッカー連盟が下した裁定の中には
いくつも疑問符が付くような決定があった。
そのもっとも新しい例がこの日曜日にカリアリ-ローマ戦が試合前
24時間を切った時点で中止になったことにより、試合を行わずして
ローマの3-0での勝利扱いになったことである。



今回、チェリーノ会長が行った愚行により、カリアリが罰せられるのは
当然である。そこに疑問の余地は無い(まだ安全性の確認が取れて
いないスタジアムに観客を呼ぼうとするなど気が狂っているとしか
思えない)。
しかしここで問題となるのはカリアリに与える罰として、”ローマに
無条件で3ポイントを与える”という手段が適正だったかどうかという
ことである。確かに今回カリアリは多くのルール違反を犯していた。
しかし、今回の様な特殊なケースではその特殊性も考慮して結論を
導くべきだったのではないだろうか。

1.そもそも試合はまだ始まっていなかった。
2.観客の行動自体がこの結果をもたらした訳ではない。
3.カリアリの選手はまさに試合を行うつもりで準備をしていた。

また今回の件で実際にローマが被った被害とはなんだろうか?と
言う事を考える必要も有る。3ポイントを無条件に与えると言う行為は
それに相応しい補償だったのだろうか?



ローマGMバルディーニはこうコメントしている。
『私たちはこの事件における被害者である。この試合に臨む為の
全ての準備を行った、フライトやホテルの手配等すべてだ。』

『ローマは自分達の利益及びファンを守るためだけでなく、競技
規則を尊重するという神聖な権利も守らなくてはならないと考えて
いる。それらは個別の事情に合わせる為に曲げることなどできない。』
(競技規則→対戦日程の進行を故意に妨害するようなことがあれば
そのクラブは罰としてその対戦は0-3での敗戦扱いとなる)

言葉だけ見るとバルディーニが正しい事は明白である。しかし1つ
忘れてはならないのは、この週末にローマが実際に被ったのは試合
前日に試合がキャンセルになったことによる混乱と金銭的な被害
だけだということである。
ローマはこの試合の為にサルディーニャ島のホテルを予約していた。
その中に怪我人の3人(トッティ、デ・ロッシ、オスヴァルド)は含まれて
いなかった。これはカリアリにとってホームで勝ち点3を取るためには
この上なく好都合だったはずだ。

ローマに無条件で3-0の勝利を与えることは結果としてセリエAの
最終的な順位に大きな影響を与えるだろう。
もしローマが3ポイント以内の差でスクデットを勝ち取ったり、CLや
ELの出場権を得たり、降格を免れたりしたら他のクラブはどのように
反応するだろうか?おそらく戦争並の議論が勃発することになるだろう。
 
議論の余地はあるだろうけども、ローマの旅費と日程組み直しの手間
の為だけにカリアリから3ポイントを剥奪してローマに与えるというのは
正しい解決方法だったとは思えない。
バカな事をしてしまう会長が居ない方に無条件に3ポイントを与えるより、
試合を実際に行ってその勝者に3ポイントを与えるべきだったはずだ。

2012年9月22日土曜日

シンプリシオ・インタビュー/ Simplicio talks about life in Japan.

パルマ、パレルモ、ローマ…そして日本。ファビオ・シンプリシオは
Jリーグと日本での生活を楽しみ、既にセレッソ大阪のファンのハートも
掴んでいる。
しかし一緒に日本に移り住んだ家族は日本食にまだ馴染めない等
問題もあるようだ。



-言葉の問題はどうですか?

 『まだ日本語は全然しゃべれないんだ。いくつかの単語が判る程度。
今、勉強してるから12月までには少しくらい話せるようになりたいと
思ってるけどね。』

-言葉と食べ物の事はさておき、日本での生活はどうですか?

『静かな町に住んで、落ち着いて生活出来てるよ。まだ色々学ばなきゃ
いけない事もあるけどね。子供たちはもう新しい生活に慣れてるみたい
だけど。』




-今でもセリエAの事はチェックしていますか?

『ブラジルに居た時よりもチェックしてるくらいだよ。つい先日も電話で
マルキーニョと電話で話してたんだ。セリエAとローマの事はつい3日前の
事のように思い出せるよ。』

-マルキーニョとはどんな話をしたんですか? 

『彼のローマでの生活の事とか、今シーズンのローマの事とかだね。
彼からは僕の日本の生活について訊かれたよ。』

-古巣パレルモの監督がシーズンが始まったばかりなのに
  ガスペッリーニに交代したみたいですが?

『これはパレルモでは普通のことなんだよ。ザンパリーニ会長は何か
上手くいかないことが続けば、すぐに監督を代えてしまう。だけどチームは
この危機を乗り越えて良いシーズンを送ってくれると願ってるよ。』

-あなたの将来について聞かせて下さい。

『セレッソ大阪とはもう1年契約が残っている。もし可能なら僕はここで
自分のキャリアを終えたいと願ってる。ここでは全てが本当に上手く
いってるからね。』

2012年9月20日木曜日

ピリスを擁護するブルディッソ / Burdisso interview after Bologna match


前半開始直後のフロレンツィとラメラの2得点でピオリ監督率いる
ボローニャに対しての勝利が決定的と思われたローマだったが、
後半ディアマンティのゴールを間に挟んだジラルディーノの2得点に
より、屈辱の逆転を負けを喫することとなった。





この夏ローマにやって来た右サイドバックのピリスはこの試合で
2失点に絡んだ為、ファンから激しい非難に晒されている。
しかしブルディッソはこの敗戦を彼の責任にすることに批判的だ。

『我々は今迄通り、しっかり練習を続けるだけだ。 確かにピリスは
ミスをしてしまった、だが我々も同じくらい試合中にミスを犯して
いたんだよ。彼が不運だったのはそれが相手ゴールに結びついて
しまったことだ。実際、彼は試合の途中までは上手くやっていた。
我々は試合をほぼ手中にしていたのに、たった2分間の混乱の
せいで試合を丸々ダメにしてしまったけどね。』  

『もう試合に勝ったと思っていたか?って、答えはNOだ。ボローニャに追い
つかれた後、我々は勝ち点を3を取りに行ったが上手くいかなかった。』

『ローマは最初の45分間ボローニャを苦しめていた。しかし試合全体の

テンポをコントロール出来なかった。いずれにしても我々のメンタリティ
(リードを奪った後も得点を取りに行く姿勢)は正しかったと思うけどね。
ホームで勝ち点ゼロという結果について、誰かが責任をとらなければ
ならないとしたら、真っ先に責められるべきは私だよ、ピリスじゃない。』

2012年9月18日火曜日

ゼーマン、ボローニャ戦後インタビュー / Zeman blame Roma's passive defence.


ローマのゼーマン監督は2点のリードを守り切れなかったボローニャ戦
での守備陣のミスを認めた。 
フロレンツィとラメラのゴールで開始15分で2-0とリードしておきながら
後半ジラルディーノとディアマンティの2得点で追いつかれたばかりか、
ロスタイムにまたもやジラルディーノに逆転弾を浴び、またもや本拠地での
勝ち点3をドブに捨ててしまった。

『我々は理想の形でゲームに入れた。ただ2点差をつけたことで必要
以上に落ち着いてしまったようだ。積極性を欠いたプレーに終始し、
畳み掛けるべきところでもそうしなかった為、ボローニャに付け入る隙を
与えてしまった。』


 『全ての失点が守備陣のミスによるものだ。我々は前半の2得点で安心
してしまった。1点目は相手のクロスに対してディフェンダーが全員ボール
ウォッチャーになってしまった。 3点目はブルディッソとステケレンブルフが
味方同士で交錯するというミスからだ。』

 『2失点目の原因はバイタルエリアの前で我々が受け身になってしまい、
積極的にボールを奪いにいかなかったこと。ボローニャはその点を非常に
上手く突いてきた。後半は中盤で前に出る姿勢が足りなかった。』

『代表戦があったことは、この試合の出来の悪さの言い訳にはならない。
我々はもう2か月以上も同じメンバーで練習しているんだ。チームの内
8~9人が代表に呼ばれたからと言って今回の結果と結び付けるのは
フェアじゃない。』

『なぜピリスを途中交代させたのかって?彼は前半走り過ぎて、後半は
足が止まっていたからだよ。それに我々は右サイドからも攻撃を
仕掛けたかった、だからボールを運べて突破力のあるマルキーニョを
投入したんだ。』

 『結果として負けはしたが、私は前半の出来にはとても満足してるよ。
何度かボローニャに危険なカウンターをもらいながらも、チーム全員が
2点獲っただけで満足せずに3点目を狙ってたからね。』

『この結果を受け入れるべきだ。それから我々の目指しているプレーに
自信を持たなくてはならない。そのいくつかはこのボローニャ戦でも、
先週のインテル戦でも見せれたのだからね。』

2012年9月17日月曜日

チェルシーはFFPを乗り切る方法を見つけたかも知れない/ Chelsea might find FFP solution.

ちょうど去年の今頃、UAEの王族アブダビファミリーがオーナーを
務めるマンチェスター・シティは同じくアブダビファミリーがオーナーの
エティハド航空とスポンサー契約を交わした。契約額はプロスポーツの
スポンサー契約としては史上最高額となる10年・1億5千万ポンド
(=約190億円)と言われている。

これはいささかずうずうしいやり方ではあるけれども、金満クラブに
とっては差し迫ったファイナンシャル・フェア・プレー(以下FFP)を
乗り切るためにはお手頃な方法ではある。



チェルシーは先日ガスプロム社相手にこれと同様のスポンサー契約を
結んだ。ガスプロム社はロシア最大の企業である、彼らとチェルシー
との契約は3年間。契約金額は公表されていないが、もちろんこれは
商業的な目的ではなく、実質的にはチェルシーのFFP対策のスポンサー
契約であることは明白なので莫大な金額であるのは間違いない。

ただこれには1つだけ問題がある。
『UEFAは関係会社との過大なスポンサー契約を禁じている。』
 のである。ガスプロム社が実質的にアブラヒモビッチの意のままに
動く企業であることは周知の事実であり、この規則の”本来の”趣旨
から言えば、この契約は禁止事項にあたり、無効である。

ここで問題となるのが”関係会社”という言葉の解釈である。
チェルシーのオーナー、アブラヒモビッチはガスプロムのオーナー
でも株主でも無い。但し、自身がオーナーであったシブネフチ社
(ロシアの石油企業)を2005年に84億ポンドでガスプロム社に譲渡した
経緯が有る。

UEFAの規則では、スポンサーに対して”明らかな影響”を持つ会社
との取引を「関係会社取引」と定義している。
そして”明らかな影響とは、スポンサーの経営及び財務面における
方針の意思決定に参加する権限を持つことである。
もちろんアブラヒモビッチは同社の役員でも株主でも無い為、
形式的には”明らかな影響”は無いことになる。ただこのスポンサー
契約がアブラヒモビッチの指示で行われた事は誰もが知っている
事実だ。UEFAはこの件をどう判断するのであろうか。
(そもそも、携帯電話や車のメーカーならともかく、天然ガス製造販売
会社が贔屓のチームのスポンサーになったからといって、英国人が
ロシアからパイプラインを引っ張ってきてガスプロムの天然ガスを
使おうなんて話が有り得るだろうか?)

もしマンチェスター・シティが史上最高金額のエティハド航空との
契約についてUEFAの追求をかわすことが出来るのであれば
チェルシーのガスプロム社との契約も間違いなくUEFAのチェックを
パス出来るだろう。
なぜなら”以前、経営していた会社を過去にガスプロム社に売却した”
という関係性は”同じファミリーが経営している”と比べてずっと希薄
だからだ。


それからチェルシーはこのスポンサー契約がUEFAに認められるように
もう1つ手をうっている。ガスプロム社が今年からUEFAチャンピオンズ
リーグ及びスーパーカップ公式スポンサーとなったのである。
ある会社からスポンサー料として数十億円を受け取っておきながら、
その会社が他の会社と結んだ契約を不正だと追及することなど
UEFAでなくとも不可能なのは明らかである。

チェルシーはチャンピオンズリーグ優勝により5,990万€もの賞金を
獲得し、さらにアウディ、ザウバーF1、デルタ航空そして今書いた
ガスプロムと新たにスポンサー契約を結んでいる。これはおそらく
今までと同じように夏のお買い物を続ける為には十分な金額だろう。

プラティニが出した難題に対して、チェルシーは明確な答えを見つけた。
他のクラブはどんな回答を見つけてくるのだろうか。

2012年9月16日日曜日

ゼーマン”ボローニャ戦前インタビュー” / Pre match conference vs Bologna

雑誌のインタビューでFIGC(イタリア・サッカー連盟)会長ジャンカルロ・
アバーテを”フットボールの敵”と評したという発言について
『私の発言が、あのような見出しになったことは正しいとは言えないね。
あれは個人攻撃をしようという意図は無かったんだ。ただFIGCという
組織は変革が必要だと言ったまでだよ。彼はただその代表というだけだ。』


先日のインテル戦では3-1で見事な勝利を収めたローマだが、チームの
柱であるデ・ロッシが代表戦でハムストリングを痛めボローニャ戦を
欠場する。
『デ・ロッシの負傷の件を怒ってるかって?そうは思ってないよ。
こういう事はいつでも起こりうることだよ。全ての物事が私の思い通りに
ならない事くらい判ってる。明日は(デ・ロッシ抜きでも)ポジティブな
ローマを見たいね。ボローニャはまだ勝点ゼロだが良いチームだ思うよ。
ミランと互角の試合をしてたしね。』

ラメラとニコ・ロペスについて
『2人とも才能ある若者だよ。私が思うにはニコ・ロペスはもっとストライカー
寄り、ラメラはゲームメイクの方が得意なタイプだね。どちらを起用するかは
そのゲームにどちらの特徴が必要かに依るだろう。』 



インテル戦で右サイドで輝きを放てなかったデストロについて。
『デストロがセンターフォワードとして起用して欲しいと思ってることぐらい
承知してるよ。彼は今までずっとそのポジションでプレーしてたのだからね、
ただそれが彼を他のポジションで起用できないって理由にはならない。
私の考えではストライカーってのは右で起用されようが左だろうが、
得点を獲らなきゃいけないんだ。もちろん新しい役割に慣れるのにある
程度時間は必要だろうけどね。』

インテルをサンシーロで下したことでにわかにユベントスとのスクデット
争いの対抗馬にローマの名前が挙がる事も多くなっている。
『我々は”アンチユーベ”では無い、あくまでも我々は”ローマ”だ。他の
チームの事は気にせず、自分達が最高のシーズンを過ごせるように集中
するだけだよ。セリエAは20のクラブが有る。他国よりクラブ間の力は
拮抗している。4~5つのクラブに優勝のチャンスが有るだろう。』

トッティとピアニッチについて
『トッティとピアニッチはゲームの組み立て役という意味では似た選手だ。
同じような選手が近くでプレーすることは常にいい結果をもたらすとは
限らない。ポジションを離して起用することも考えている。

2012年9月15日土曜日

ゼーマン『カターニア戦を語る』 / Zeman talked about "Catania match"


全くタイムリーな記事では無いのですがセリエA第1節カターニア戦後の
ゼーマンのインタビューを記事にしました。
日本語になったニュースでは大半が省略されていたのですが、元の
インタビューには彼のサッカー哲学を知る上でヒントとなるようなフレーズが
たくさん散りばめられています。

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特に前半はまったくつまらない試合をしてしまったね。我々はスピード
にもアグレッシブさにも欠けていたし、カウンターが狙える場面でも
縦にボールが入ることが無かった。恥ずかしいことだがボールを支配
している事だけで満足してたんだよ。
前半と比べると後半の出来はまだ良かった。最後まで苦しむ事には
なったが最低限の結果(勝ち点1)は確保したしね。

トッティはサイドに開きすぎてプレーしていた。あんな場所からはゴールに
絡むような決定的な仕事は生み出せない。この夏のキャンプの間
ずっと私が彼に教えてきた動きを彼は忘れてしまっていたみたいだ。

横パスに意味なんて無いんだよ。横に出すパスは相手選手に
それぞれのポジションに戻る時間を与えるだけ。もっとプレーの
スピードを上げて中盤で相手マーカーを振り払わなくては、私の
目指すサッカーには辿り着けない。



私は今日がローマデビューとなる選手を5人(カスタン、バルザレッティ、
ピリス、ブラッドリー、ニコ・ロペス)ピッチに送り込んだ。若い選手達に
とっては5万人を越えるオリンピコの熱気に飲まれて思った様な
プレーが出来なかった部分も有るだろう。ただ我々がこの6週間の間
練習でやってきたことは今日ピッチの上で起こった事とは全くの別物だ。
言い訳は出来ないね。

相手に合わせてこちらの戦術を変える様な事はしない。私は相手に
合わせるより、私の信じる事をする方が好みだからね。

後半はまだ良かった。何度も相手ゴールに迫ったしね。カターニアに
2ゴールを許したのは残念だよ。ただ2回とも本当はオフサイドだった
けどね。
以前、ゼーマンはクラブから”審判に対する抗議は行わないように”
と注意を受けていたのだが、あまり気にしていない様だ。審判に
対して抗議しないというのはローマのクラブ方針である)

これは体に染みついた癖みたいなもんだよ。選手のプレーが不味かったら
私はすぐに批判する。審判に対しても同じだよ。これは普通のことだと
思うがね。ピッチの上で起こった事であるなら判定について話すことは
禁止されるべきじゃない。

2012年9月14日金曜日

ファイナンシャル・フェア・プレーの盲点 / Will FFP be in effect?



ファイナンシャル・フェア・プレー(以下FFP)についてもっともよく
見かける疑問はおおまかに言うと下記の様なものだ。

(疑問)
12/13シーズンからFFPが適用されれば、クラブの赤字は2シーズン
合計で4,500万ユーロ(=約45億円)までに制限される。
しかしミランやインテルと言ったクラブがせっせとコスト削減に励んで
いる一方で、チェルシー、マンチェスター・シティ、PSGといったクラブは
以前と変わらず移籍市場に莫大な金額をつぎ込んでいる。昨シーズン
までの彼等の経営実績からすると、赤字を4,500万ユーロ以内に収める
のは不可能だ。
FFPに違反するとチャンピオンズリーグ等のUEFA主催の大会に参加
出来なくなるのだが、彼等はこの事態を怖れていないのだろうか?


残念ながら私はアラブの王族の一員でも、ロシアの石油王でもないので、
これに対する明確な回答は持ち合わせていない。
しかしこの問題に関しては、多くの人が見逃している重要なポイントが
1つ存在するので指摘しておきたい。
UEFAの定めたFFP規則(A4・87ページにも渡る実に退屈な読み物である)
の"付録第11条"という条項が有る。
規則の最後の1ページに書いてある実に小さな条項なのだが、この内容が
非常にまずいというか致命的なのである。条項の要点を簡潔にまとめると
次の通りだ。

『2シーズン合計の赤字額がFFPの制限を越えていても、赤字額が
縮小傾向に有り、将来的に赤字を解消する見込みがあれば、クラブは
FFP検査をパス出来る』

・・・つまり実際に赤字額を制限内に収めなくとも、最終的には全てUEFAの
さじ加減(将来的に赤字が解消されると判断すれば)でFFPはクリア出来て
しまうという訳である。

これこそがFFP施行における最重要問題なのは明らかである。罰する
立場からすると、FFPの内容をほぼ骨抜きにしてしまうこの条項が有る
限り、FFPは”ルールの問題”というより”UEFAの裁量の問題”となって
しまう。
なぜならどのクラブも口では『将来的には赤字は解消されます』と
言うに決まっているのだから。

もしUEFAがあるクラブをFFPに違反したと言う理由でチャンピオンズ・
リーグから締め出したとしたら、それはルールに従った措置と言うより、
UEFA執行部の判断で参加を許されなかったと見なされるだろう。

この様に明確な線引きが無い状態でFFPを理由に一部のチームを
チャンピオンズ・リーグの様な大きな大会に参加させない事は困難
である。
なぜなら賞金・放映権合わせて数十億円のお金が動くような大会への
参加の可否は、クラブ経営の死活問題になり得るし、訴訟へ発展する
可能性も含んでいるからだ。



これがサッカー関係者の間でFFPが事実上決して機能することは
無いと信じられている理由である。
今のところFFPの存在理由は、クラブのオーナーが大して価値が
無さそうな選手に大金を払うのが嫌な時の言い訳の為だけである。

『最終的にフッキ獲得を断念したのはFFPを考慮したからだ。』
『イブラヒモビッチを放出したのはFFPを考えると仕方無かった。』

こんな風に言っておけば煩いファンも少しは納得するのである。

さて実際にチェックが開始される12/13シーズン末、違反したクラブが
出てきた際にプラティニはどんなコメントを出すのだろうか。


*正確に言うと今回記事にしたFFPの"付録第11条"の解釈に
 ついてはもう少し説明が必要です。
 ただ問題の性質上、かなりの長文になってしまうため、次回改めて
 補足記事を書くことにします。

2012年9月13日木曜日

ローマ、オリンピコにVIPシートを創設 / Tribuna 1927


2年前にローマがアメリカ人実業家トーマス・ディベネデット(ボストン・レッド
ソックスの共同オーナー)とジェームズ・パロッタ(ボストン・セルティックスの
共同オーナー)に売却されることが決定して以来、彼等は『ASローマ』という
チームをバルセロナやマンチェスター・ユナイテッドと並ぶような世界的な
ブランドにまで引き上げることを目標としてきた。
パロッタは公式には先週、新しいローマの社長に就任したばかりだが
既にローマを次のレベルに導くための方策を打ち出している。

クラブの中でのアメリカ資本の影響力を高めつつ、地元の自治体・官公庁
と連携して2016年までにローマ郊外にサッカー専用スタジアムを建設する
ことを目指すのがその第一歩である。パロッタと経営陣が狙っているのは
今迄の試合観戦のあり方を完全に刷新することだ。 具体的には近年、
チェルシー、バルセロナそしてユベントス等のクラブが成し遂げたような
改革である。
ローマは先日、スタディオ・オリンピコの一角に『Tribuna 1927』という
フェンウェイパーク(レッドソックスの本拠地)にあるような豪華なボックス
シートを増設した。



このクラブの創設年を冠したこの最先端のVIPシートでは席暖房が完備。
この席から行くことが出来るレストランでは最高級の料理が提供され、
大きな窓から厨房で料理が作られている過程も見ることが出来る。
備え付けのバーからはキックオフ及び後半開始時にピッチに出てくる
選手たちを間近に見ることも可能だ。

そして試合中に瞬きすることも可能になる。今までオリンピコで試合を観た
ことが有る方はお分かりかも知れないが、このスタジアムには巨大な
スクリーンが2つあるがどちらも試合中にリプレイを流すことは無かった。
しかし『Tribuna 1927』にタッチスクリーン式のモニターが備え付けられ、
そこには試合のハイライトだけでなく、試合前のロッカールームや
通路を通ってピッチに向かう選手たちの映像も写しだされる。

『これはイタリアで初めての試みなんです。』とVIP部門のマネージャで
あるレオナルド・ロッシは語った。彼は今年ローマに加わる前は、昨年
新スタジアムを建設して大成功を収めたユベントスで同じ職にあった。
『すごく近代的でしょう。我々が一番大事にしていることは高級感ですよ。
この新しい席で提供される食事、眺望は本当に特別なものです。』

スタディオ・オリンピコには陸上競技場も併設されている為、トラックが
ファンとピッチの間を遠ざけている。しかしこの新シートはよりピッチを
近く感じることが出来るのである。

この競技場を所有するイタリアオリンピック委員会はこのスタジアムを
ローマとそのライバルであるラツィオ両者に貸し出しているが、この新しい
VIP席を利用できるのはローマファンだけである。
この点でローマはラツィオより一歩前に居ると言えるし、クラブとファンの
関係をより強固にすることにおいても先んじたと言える。ローマの狙いは
試合でもピッチの外でも常にライバルを上回ることなのである。

2012年9月12日水曜日

イタリアサッカーにおける共同保有権制度/ Co-ownership system in Italian Football

サッカーファンの間で多くの混乱と誤解を生んでいるセリエA及び
下部リーグにおける選手の共同保有権問題について解説しよう。
このイタリア独特の制度は長い間、ファン及びサッカー関係者の間で
議論の対象となってきた。そして多くの場合、懐疑的な目で見られて
いたことも事実だ。

しかしながらこの制度は上手く利用すれば、関係クラブのコスト削減
という観点からだけでなく、取引に関わった3者全員(両クラブそして
選手本人)にとって莫大な恩恵をもたらすものなのである。
実際に最近のイタリア代表を見てみても、ほとんどの選手がキャリアの
初期にこの制度の元で移籍を経験しているのが判るだろう。

悲しい事にユベントスの元スポーツ・ディレクター、アレッシオ・セッコ
(ユベントスの元SD、クリッシートの移籍に関して不正が有ったとされ
同クラブを解任されている)の行った多くの悪名高き取引の為、未だ
にこの制度はサポーターの間では取引の裏に何かが隠されている
のではないかと疑問視されることも多い。




共同保有、イタリア語で"compartecipazione”と呼ばれるこの制度は
2つのクラブが選手の保有権を50%づつ持つ制度である。もちろん選手は
この2つのクラブの内、どちらかでしか試合には出場出来ない。
一般的にはビッグクラブとプロビンチャが保有権を持ち合い、実際に
選手登録されるのはプロビンチャの方になることが多い。

このシステムはイタリア以外でもアルゼンチン、チリ、ウルグアイ等で
良く利用されていたが、それらの国々では最近はカルロス・テベスの
マンチェスター・シティへの移籍の例に見られる様に第3者が所有権を
持つ方向にシフトしている。

共同保有権制度の一番の利点は、経営規模の小さなクラブが通常の
移籍では獲得が難しいような有望な若手選手と契約できることにあると
信じられている。 これは部分的には正しい・・・加えて保有権の半分を
持つ事で小規模なクラブは単純なレンタル移籍(しばしば貸出元の
クラブの都合で一方的にキャンセルされたりする)で選手を借りるよりも
ずっと選手をコントロール出来る。
またビッグクラブはこの様な小さなクラブから選手を獲得する場合に
しばしば取引材料として他の若手選手の保有権の半分を差しだす事も
ある。

選手にとっては共同保有での移籍は別の意味も持つ。借り入れる側の
クラブも金銭的な投資を伴う共同保有形式での移籍は、一般的に
単純なレンタル形式での移籍よりも出場機会が与えられる場合が多い
のである(フェデリコ・マケダがサンプドリアで無駄にした6か月を覚えて
いるだろうか)。
さらに貸出元のクラブにとっても多くの場合、有望な若手選手を
プレッシャーの少ない環境で、多くの出場機会を与えることで成長させる
ことが出来るのメリットがある。

コンセプトを明瞭にするために、2つの架空の例を考える事にしよう。
ローマは才能ある20歳のストライカーを2人抱えていたが、トップチーム
には既に多くのストライカーが居るため、彼らを昇格させるのは難しい。
そこでローマは1人をボローニャにレンタルし、もう1人は所有権の半分を
シエナに300万ユーロで売却して移籍させた。

前者はほとんどの時間をベンチを温めて過ごし、シーズン終了後に
スタディオ・オリンピコに経験不足のまま、1歳年をとっただけで帰って来た。
もちろんクラブの自分に対する態度にも幻滅を感じている。

対照的に後者は金銭的対価が支払われたこともあり、シエナで出場
機会を与えられた。結果として彼はレギュラーポジションを確保し、多くの
ゴールも決める事が出来た。シーズン終了後、ローマは彼を呼び戻す
ことにした。トッティの横でプレーさせる為に、シエナに売却した所有権の
半分を550万ユーロで買い戻したのである。

最初はこの制度に不慣れな人達はこう思うだろう。シエナは当初、
選手の所有権の半分を購入する為に300万ユーロを払った、それが
どうして1年後に550万ユーロになるのかと。しかし選手がこの移籍で
得た経験や自信については単純にお金には換算できないのである。
この差額をローマはこの選手への投資と捉え、シエナは選手に出場
機会を与え、成長させた事の見返りとして受け取るのである。

もしこのFWが伸び悩み、セリエAでプレイするレベルにないと証明
することになったとしてもローマは当初の300万ユーロは受け取って
いるし、加えてこの選手への評価を手元に置いておくよりも、ずっと
早く定める事が出来るのである。



もちろん貸出元のクラブが選手の価値を大きく見誤った為に多額の
損失を出した例もある。近年、もっとも有名な例はアドリアーノの一件
だろう。 2002年、インテルはこのブラジル人ストライカーの所有権の
半分を450万ユーロでパルマに売却したが、彼が36試合で22得点を
決めた後で50%を買い戻すのには1,500万ユーロを要したのである。

憶えていなければならない重要なポイントは、FIGC(イタリアサッカー
連盟)の規則で、共同保有契約は厳格なガイドラインに沿って運用
されるように指示されていることだ。
毎年6月末が近づくと両クラブは共同保有契約を更新するか否かの
話し合いを行わなくてはならない。
つまり・・・
(1)所有権を50%づつ持ちあったまま、もう1年間どちらかのクラブで
  プレーさせる。
(2)どちらかのクラブが相手チームの持っている所有権の半分を
  買い取る。金額は両クラブで協議する。

期限までに上の2つのどちらの合意にも至らなかった選手については、
両クラブによる競争入札が行われ、より高い金額を提示したクラブが
相手クラブが持つ”所有権の50%”を買取ることになる。

一般的に経営者たちは選手を市場価値より低い値段で手放す
ことや、手元に置いておきたい選手の入札で敗北する事も嫌うため、
出来るだけ競争入札になることを避けようとする傾向にある。



数年前、フィオレンティーナがクラブ消滅の危機から立ち直り再び
セリエAに戻って来た時、彼等はキエッリーニ、ミッコリ、マレスカの
3人の所有権の半分を獲得するために1,350万ユーロを支払ったが、
1年後に競争入札に敗れたため、そのすべてを失い。670万ユーロの
損失を出した。
当時のフィオレンティーナの財務状態は不安定で有った為、3人の入札に
高値をつけるのが難しいと判断したルチアーノ・モッジ(カルチョポリで
有名な元ユベントスGM、プロビンチャから選手を獲得する際に必ず若手の
共同保有権を使って値引きさせるのが常套手段だった)に才能ある
3人を格安で買い叩かれたのである。

上記の例の様に入札に失敗すると周囲から激しい非難を浴びることも
多い為、当然ながらクラブの経営陣は入札になることを非常に怖れる。
その為、ほとんどの共同保有のケースでは問題は話し合いで解決される
(貸出元のビッグクラブが競争入札になるのを嫌った結果、期待の若手が
思ったよりも長くプロビンチャに留まることも多い)。

つまり共同保有制度は大局的に判断すると、一方のクラブには彼等の
貴重な戦力となる選手を与え、もう一方のクラブには才能ある若者に
成長の機会を与える事が出来る素晴らしい制度なのである。
近年の例で言えばアバーテやジョビンコがその良い証拠となるだろう。
この制度が無ければ彼等はその才能を磨くどころか、グラウンドに
立つ機会も無かったのだろうから。

2012年9月9日日曜日

こんにちはゼーマンさん(後編)/ Hello, Mr. Zeman ! (Part 2)

 
時は流れてもゼーマン教は廃れることはなかった。 海辺の町ペスカーラに
落ち着くとゼーマンは遂に1992年以来のタイトルを獲得する。
それは”奇跡のフォッジャ”時代を想起させるゴールラッシュでの優勝だった。
ゴールネットを揺らした数は実に90回、 ペスカーラに次いで2位で
シーズンを終えたトリノの55得点のほぼ倍である。全てのゼーマンが
率いたチームと同じく唯一予想可能な事は、彼のチームは予測不可能で
且つ観ている者が楽しめる攻撃を繰り出すことだけ。FWやMFが奔放に
相手陣内に流れこむような攻撃を仕掛ける一方で相手からの攻撃に
注意を払うようなことは無かった。

彼がペスカーラで作り上げたチームは色々なタイプの選手を上手く混ぜ
合わせて構成されていた。 経験豊かなベテラン選手が脇を固める中で
数人の素晴らしい若手が輝きを放った。特に28ゴールをあげてリーグ
得点王となったインモービレ(ユベントスからのレンタル)、トリッキーな
動きが出色だったインシーニェ(同ナポリ)、前線を激しく掻きまわした
カプラーリ(同ローマ)の活躍は特に印象的だった。
地元出身の19歳ヴェラッティは全てのイタリアのビッグクラブが注目する
までに成長し、シーズン終了後にはプランデッリによってユーロ2012の
召集メンバーに選ばれた。

ゼーマンは彼自身がヘビースモーカーであるにも関わらず、選手には
最高の体調管理と途方もない運動量を求める。彼はスタミナを得点と
同じくらい愛していると言い換えても良い。
彼の試合を観ればすぐに理解出来るだろう。彼がキックオフ時に
センターラインに選手を8人も並べる意味を。どうして彼がチームに
試合を通じて90分間ほとんど休み無しで走り続けるのを要求するのか?
何故、ビーチや森の中を延々と走り続けたり、スタジアムの階段を
繰り返し上り下りする事に代表される悪名高い軍隊式の厳しい
トレーニングをチームに課すのか?

ゼーマンはありきたりな変化への要求を嘲笑うかのようにペスカーラで
20年前フォッジャで行ったのと全く同じ戦術・フォーメーションを用いた。

現代のサッカーでは常識となっているハイプレスとサイドバックの攻撃
参加を内包した先進的な4-3-3システムの採用・・・おそらく彼の最初の
成功は本物の奇跡と呼んでも良いだろう。 この点については多くの記者を
集めて行われたローマの監督就任会見でも触れている。

『人々は私が戦術的に変わったと言うが、私は全く同意できないね。
私が自分のチームに求めるのはファンを楽しませることだ。それによって
ファン達はもっと身近な存在となり、チームにより情熱的な応援を送って
くれるようになる。上手くやって私のやり方に懐疑的な人々を納得させ
たいね。』

90年代初め既に彼がサッカーを語るのに幾何学やパス交換する際の
三角形の位置関係の重要性を語っていた事を引き合いに出すまでも無く、
彼の存在は時代の先を行っていた。
彼は単にそのアウトサイダーという肩書だけではなく、ルイス・エンリケの
やろうとしていた仕事を受け継ぐのに相応しい後継者なのだ。

スペインからやって来た前任指揮官は、彼の在任中、自身の少ない
指導経験と実績にも関わらず、バルディーニとローマ経営陣から遥かに
大きい信任を与えられた。しかし、それと引き換えに彼は同じくらい大きい
失敗の責任も負わされることとなった。彼がローマを離れたのは、初めて
この地にやって来てからまだ1年も経っていなかった時だった。

同じように、10年以上ぶりにローマに帰って来た英雄に対する信任は
厚い。むしろ前任者より大きな余裕が与えられていると言っても良い
だろう、何故なら彼がズデネク・ゼーマンだからだ。
彼の率いる新生ローマが私達を楽しませてくれるのは間違いない。
最後に彼の言葉を1つ引用しよう。
『90ゴールを決めれば、何失点するかなんて心配しなくていい。』
これこそがゼーマニズムの真髄である。

それでは楽しい旅を!

2012年9月8日土曜日

こんにちはゼーマンさん(前編)/ Hello, Mr. Zeman ! (Part 1)


 『私はイタリアサッカーに毒されていない人物を探していたんだ。
私は彼の大胆不敵な部分に魅かれていた。サッカーに対するアプローチと
いう意味でも、そして彼自身のキャラクターという意味でもね。
彼はやる気に満ち溢れていたよ、彼のサッカー哲学、すなわちゴールを
多く決めるという目的を達成するためにね。』
昨年、ローマのGMフランコ・バルディーニは新監督をルイス・エンリケに
託す決定した理由をそう話した。 この言葉は皮肉にも1年後にその後任
となったゼーマンにもそっくり当てはまる。

プラハに生まれたゼーマンは正真正銘のアウトサイダーだ。彼のスタイルを
好むか好まざるかは別として、彼の率いるチームがイタリアでもっとも
情熱的なサッカーを見せてきたのは事実だ。
そんな彼に引き付けられたのが12ヵ月前にアメリカ人オーナーに買収
されてからクラブの新たな礎を築きつつあったローマだった。

ゼーマンは前年の2011/12シーズン・セリエBペスカーラにおいて優勝を
成し遂げた。カルチョの世界の多くの者から称賛を集める彼の名声とは
裏腹にこれが彼にとって1992年にフォッジャで同じタイトルを獲得して以来、
生涯で2つ目のトロフィーである。ただ彼の事を語るのに獲得したタイトルや
メダルの数はあまり意味を持たない。とにかく、このセリエBでの優勝と
共に彼の伝説は始まったのだ。

彼はプーリア州にある3部の弱小クラブを数年でUEFAカップの出場権を
手に入れるところまで引き上げた。ファビオ・カペッロに率いられた守備に
一生懸命なミランが国内、欧州の舞台で実績を積み上げている時に
イタリアに現れた彼の攻撃的サッカーはほとんどエイリアンの様だった。

後に『奇跡のフォッジャ』と呼ばれることになるこのチームは、その後の
彼の攻撃的サッカーの代名詞となる”ゼーマニズム”の出発点となった。
 フォッジャで臨んだゼーマンのセリエAデビューは開幕前にメディアから
無名選手ばかりを寄せ集めたリーグ最弱チームと評されながらも
最終的にはリーグ中位を確保した。



 このシーズン、彼は多くの才能ある無名の若者を世間に紹介する事に
なった。ジュゼッペ・シニョーリ、ダン・ペトレスク、ルイジ・ディビアッジョ、
ブライアン・ロイ・・・だが彼等よりも世の中の注目を集めたのはゼーマンの
採った攻め続ける為だけに考えられたような戦術だった。
この攻撃スタイルのエッセンスを体現したかのようなフォッジャはシーズン
58ゴールを挙げる。これはこの年スクデットを獲得したミランに次いで
リーグ2番目の数字だ。一方で監督がほとんどディフェンスを重視して
いないことの証拠に得点と同じ数だけの失点も計上した。

ゼーマンはそこからラツィオに引き抜かれ、彼らをセリエAで2位と3位に
導いた。その頃にはイタリアのサッカーを観ている者なら皆、彼が
攻撃的サッカーと煙草をこよなく愛している事を知るようになっていた。

ラツィオを解雇され、同じ街のライバルであるローマの監督に就任すると
彼の言動はしばしば論議を呼ぶ様になる。
デルピエロやヴィアッリの体格が短期間に激変したことを指摘して
ユベントスとの間にドーピング疑惑騒動が起こる中、ゼーマンはローマを
なんとか4位に滑り込ませた。

ローマを離れても、彼は常にカルチョの権力者達との闘争を繰り返し
次第に世間は彼を異端児と見なすようになった。彼は遊牧民の様に
2010/11シーズンにフォッジャの監督に再就任するまでの間、ナポリ、
フェネルバチェ、レッドスター・ベオグラード等9つのクラブを渡り歩いた。
フォッジャへの帰還は熱狂的な歓迎と共に受け止められ、就任発表
から僅か24時間で3,000枚のシーズンチケットが売れた。悲しい事に
彼はかつての栄光をスタディオ・ザッケリアにもたらすことに失敗し、
プレーオフへの出場権を逃すとすぐにペスカーラへと去ることに
なったのだが。

→ こんにちはゼーマンさん (後編)に続く

2012年9月7日金曜日

サンシーロがゼーマンランドとなった日/ Zemanlandia at San Siro

今季のセリエAに於いて特別な90分間となった。
イタリア全土から熱い視線が送られたこの試合でサンシーロは
"ゼーマンランド"と化した。


インテルのファン達はキックオフ前にクルヴァにこんな横断幕を
掲げた『偉大なるゼーマン、クリーンなカルチョの象徴』
それはサンシーロに集まったインテルファン達からの、多大な
犠牲を払いながらも、常に自身の信念に忠実だった65歳の男
への賛辞だった。
もっとも90分後には彼等はローマに叩きのめされ、この老人への
感謝の念はすぐに忘れられることになるのだが。


シーズン前夜、未だにイタリアサッカー界を苦しめ続ける八百長
スキャンダルについて尋ねられた時、ゼーマンはこう答えている。
『フットボールってのはゲームだろう?だったらそれをやるだけだ。』
そして日曜の夜、その言葉通りのことをローマはやってのけた。

前半15分、トッティが完璧なクロスを放り込むとフロレンツィが
簡単に頭で合わせて先制。

奇しくも、この試合当日、ゼーマンが過去2シーズンをかけて
(フォッジャとペスカーラ)その才能を開花させたインシーニェが
アズーリに召集されることが発表されていた。
チェコ生まれの老将には近い将来同じようにアズーリに呼ばれる
もう1人の若者の名前がはっきりと見えたことだろう。



後半、再度トッティから放たれたセンセーショナルなスルーパスから
オスヴァルドのゴールが生まれる。ガゼッタ・デッロ・スポルトは
『3本のクロス、3つのアシスト。トッティは老いることを知らない!』
と最高の賛辞を翌日の一面に並べた。
ローマの為に用意された夜はオスヴァルドのロブパスに反応した
マルキーニョがほとんど角度の無い所からねじこんだ美しい3点目で
締めくくられた。

それは本当の意味でのローマの新シーズンの幕開けだった。そして
そのパフォーマンスは開幕してまだ2試合しか消化していないのにも
関わらず、試合を観た人々に『果たしてゼーマンはスクデットを勝ち
取れるだろうか?』という質問を始めさせるのに十分だった。
ゼーマン自身がこの試合の内容にまだ満足していないのにも関わらず。

『我々は良い試合をした。チームはインテルを驚かせようと思っていたし
実際にそれを試合でやりとげた。』と65歳の老将は説明した。
『まだ改善の余地が有るのは事実だが、今日の結果が我々がやっている
サッカーが正しいものだという自信を与えてくれたのは事実だ。』



またサンシーロに掲げられた横断幕についてもコメントしている。
『今日、メッセージを掲げてくれた人達に感謝したい。そして他の人達も
同じようにカルチョの世界がクリーンであるべきだと思っていると
信じたいね。』

もちろんイタリアサッカー界の暗部に公然と反抗したり、試合の勝敗
よりも試合の質を優先する彼の姿勢に対する賞賛の影に隠れて、
多くの人達がローマが開幕試合のカターニア戦で危うく敗北寸前だった
のを忘れかけていることも事実だけれども。

ゼーマン自身が『これがゴールでは無い。』と試合後のインタビューを
締めくくった。
彼の言葉が正しい事を願おう。

2012年9月6日木曜日

セリエA 第2節 vs インテル / Nico is back!

ホームでの開幕戦を引き分けた我らがローマの第2戦は
敵地に乗り込んでのインテル戦。
ゼーマンの様に相手に合わせて戦術を変えることなく常に
攻撃的な相手と対峙する時に対戦相手には2つの選択肢が有る。
引いてカウンターを狙うか、オープンな撃ち合いを望むかだ。
果たしてストラマッチョーニは高いDFラインと共に後者を選択
してきた。



ローマのスタメンは開幕戦で全く良いところの無かったラメラに
代わってデストロ。ブラッドリーとピアニッチを怪我で欠く中盤は
左からフロレンツィ、タクシディス、デ・ロッシを並べた。
DF陣は前節と入れ替え無し。

インテルはカンビアッソの代わりに新加入のぺレイラが入った
以外は開幕戦と同じメンバー。
左CHにぺレイラを起用したことからも判るようにインテルは
最初から左サイドを徹底的にゴリ押ししてくる。
カッサーノ、ペレイラ、長友の3枚に加え、スナイデルも左サイドに
張り付いて、カターニア戦で脆さを見せたピリスを狙い撃ち
してくる。

対するローマはボールを奪うと逆サイドのトッティにボールを集めて
対抗する。インテルが左に大きく偏った配置になっている為、
トッティにはいつもより少し大きなスペースが与えられた。
この日のトッティにとっては、色々な意味でそれで十分だった。

15分、サイドチェンジのボールを受けるとワンタッチで
サネッティを交わして簡単に中に折り返す。
グアリンとシルベストレがニアに走り込んでいたデストロに完全に
気を取られていたため完全にフリーになっていたフロレンツィが
頭で綺麗に合わせて先制点。
この日のグアリンは守備を任された中盤の選手としては理想的な
働きを見せていたが、左サイドに居たり居なかったりするトッティに
加え、絶えずバルザレッティとフロレンツィが交互に彼のスペースに
侵入してくるため、DF陣とのマークの受け渡しに苦しんでいた。



事態の打開を図るために左サイドにポジションを移した
カッサーノが前半ロスタイムに幸運なゴールを決め、ローマは
一旦追いつかれるが、67分にはカウンターからトッティ→オスヴァルド
とカウンターのお手本の様なパスが渡り再びリード。こうなると
インテルにはもう反撃する余力が残されていなかった。

81分にマルキーニョがオスヴァルドがトッティの真似をして
あげたようなロブパスを角度の無い所から叩き込んで試合終了。
このゴールはボールを奪ってから4本のパスをすべて縦方向に
シンプルに繋いだゼーマニズムのエッセンスを体現したかの
ような得点だった。

左サイドを攻めるインテルの狙いは正しかったかも知れない、
ただイーブンボールの時にボールを預かる役目を担うのが
ガルガノでは力量不足。お世辞にも攻撃の起点となっているとは
言い難かった。
対するローマはトッティがおそらく05/06シーズン以来の試合中の
タッチ数でチーム1の数字を記録。前線の左サイドでゲームメイクする
という現代サッカーのセオリーでは有り得ないことをやってのけた。
ガルガノとトッティ… 両チームでそれぞれもっともパスを裁いた
プレイヤーの力の差がそのまま最終的なスコアに反映された
結果となった。



そして隠れたMOMはブルディッソ。カッサーノが退いた後、インテルが
執拗にミリート目がけて放り込み続けたパスを黙々と弾き返し、
スナイデルやパラシオからは自由とスペースを奪い続けた。
試合後にロッカールームに引き返す彼の背中は『今シーズン最高の
補強はデストロでもバルザレッティでもない。俺の復帰だ!』と
言わんばかりだった。
ローマに本物の狼がまた1匹戻ってきた。

2012年9月2日日曜日

シシューポスの神話 / Le Mythe de Sisyphe



1年でもっとも長い8月31日の終わりは、本当の意味で新しい
シーズンが始まった事を意味する。
つまり僕等(学習能力が無く、合理的な思考が出来ない者
たちの総称だ)はまた1年かけてシシューポスの様に岩を
山頂に押し上げる作業を始めるのだ。


僕等は知っている、岩はてっぺんまで届く前に必ず転がり
落ちてしまうことを。
しかしそれはローマと云う報われないチームとフットボールと云う
不毛なゲームを愛してしまった者達の宿命なのだ。
だから僕等は今年も岩を転がし始める。


シシューポスは彼の犯した罪の代償としてこの無限地獄の罰を
神々から与えられた。
しかし僕等は神に強要されなくとも、今年も喜んで岩を押し上げる
だろう。理由なんてものは必要ない、そうジョージ・マロリーの
セリフを引用なんかしなくてもね。