2012年9月7日金曜日

サンシーロがゼーマンランドとなった日/ Zemanlandia at San Siro

今季のセリエAに於いて特別な90分間となった。
イタリア全土から熱い視線が送られたこの試合でサンシーロは
"ゼーマンランド"と化した。


インテルのファン達はキックオフ前にクルヴァにこんな横断幕を
掲げた『偉大なるゼーマン、クリーンなカルチョの象徴』
それはサンシーロに集まったインテルファン達からの、多大な
犠牲を払いながらも、常に自身の信念に忠実だった65歳の男
への賛辞だった。
もっとも90分後には彼等はローマに叩きのめされ、この老人への
感謝の念はすぐに忘れられることになるのだが。


シーズン前夜、未だにイタリアサッカー界を苦しめ続ける八百長
スキャンダルについて尋ねられた時、ゼーマンはこう答えている。
『フットボールってのはゲームだろう?だったらそれをやるだけだ。』
そして日曜の夜、その言葉通りのことをローマはやってのけた。

前半15分、トッティが完璧なクロスを放り込むとフロレンツィが
簡単に頭で合わせて先制。

奇しくも、この試合当日、ゼーマンが過去2シーズンをかけて
(フォッジャとペスカーラ)その才能を開花させたインシーニェが
アズーリに召集されることが発表されていた。
チェコ生まれの老将には近い将来同じようにアズーリに呼ばれる
もう1人の若者の名前がはっきりと見えたことだろう。



後半、再度トッティから放たれたセンセーショナルなスルーパスから
オスヴァルドのゴールが生まれる。ガゼッタ・デッロ・スポルトは
『3本のクロス、3つのアシスト。トッティは老いることを知らない!』
と最高の賛辞を翌日の一面に並べた。
ローマの為に用意された夜はオスヴァルドのロブパスに反応した
マルキーニョがほとんど角度の無い所からねじこんだ美しい3点目で
締めくくられた。

それは本当の意味でのローマの新シーズンの幕開けだった。そして
そのパフォーマンスは開幕してまだ2試合しか消化していないのにも
関わらず、試合を観た人々に『果たしてゼーマンはスクデットを勝ち
取れるだろうか?』という質問を始めさせるのに十分だった。
ゼーマン自身がこの試合の内容にまだ満足していないのにも関わらず。

『我々は良い試合をした。チームはインテルを驚かせようと思っていたし
実際にそれを試合でやりとげた。』と65歳の老将は説明した。
『まだ改善の余地が有るのは事実だが、今日の結果が我々がやっている
サッカーが正しいものだという自信を与えてくれたのは事実だ。』



またサンシーロに掲げられた横断幕についてもコメントしている。
『今日、メッセージを掲げてくれた人達に感謝したい。そして他の人達も
同じようにカルチョの世界がクリーンであるべきだと思っていると
信じたいね。』

もちろんイタリアサッカー界の暗部に公然と反抗したり、試合の勝敗
よりも試合の質を優先する彼の姿勢に対する賞賛の影に隠れて、
多くの人達がローマが開幕試合のカターニア戦で危うく敗北寸前だった
のを忘れかけていることも事実だけれども。

ゼーマン自身が『これがゴールでは無い。』と試合後のインタビューを
締めくくった。
彼の言葉が正しい事を願おう。